オシロスコープ メモリ長
「メモリ長(レコード長)」とは、オシロスコープが1回の測定で記録・保存できる波形データの最大サンプル数を示す指標です。たとえば、レコード長が10Mポイントであれば、1回のトリガに対して最大1000万個のサンプルを記録できるという意味になります。これは、どれだけ長い時間・詳細な波形を保持できるかに直結する非常に重要な性能です。
メモリ長の役割と重要性
オシロスコープは、サンプリングレートに応じて波形を細かく観測しますが、波形を記録・表示するにはそれを保存するメモリが必要です。メモリ長が短いと、波形の一部しか保存されず、細部を確認する前にデータが切れてしまいます。特に、高サンプリングレートで長時間にわたる波形を記録しようとすると、多くのメモリが必要になります。
逆に、メモリ長が十分にあれば、過去の波形をさかのぼって確認したり、詳細なズーム解析を行ったりすることが可能になります。つまり、メモリ長はオシロスコープの「記録容量」にあたり、測定可能時間や解析精度を左右する重要なスペックです。
サンプリングレートとの関係
メモリ長は、サンプリングレートと密接に関係しています。高いサンプリングレートを維持しながら長時間の波形を記録したい場合、より大きなメモリ長が必要です。逆に、メモリ長が固定されている場合、記録時間を延ばすにはサンプリングレートを下げるしかなくなり、波形の細部が不鮮明になることもあります。
たとえば、同じ10Mポイントのメモリを使って、1GSa/sで記録すると約10ミリ秒分の波形が記録可能ですが、100MSa/sであればその10倍、約100ミリ秒分の波形が記録できます。どの程度の時間範囲を、どれだけの分解能で観測するかによって、メモリ長の必要量は変わってきます。
測定用途に応じたメモリ長の目安
メモリ長は、用途や目的に応じて適切な長さを選ぶ必要があります。以下は、おおまかな目安です。
■ 単純な周期波形やクロック信号の確認:10k~1Mポイント
■ 過渡現象、スイッチングノイズ、EMC測定など:10Mポイント以上
■ 長時間トレンド記録、オーバービュー用途:50Mポイント以上
■ 高速信号のズーム解析・プロトコルデコード併用:100M~1Gポイント以上
最近では、メモリ長100Mポイント以上を搭載した中価格帯モデルも増えており、詳細な波形解析がより手軽になっています。
メモリ長が不足するとどうなるか
メモリ長が短いと、表示される波形が途中で途切れたり、時間軸を拡大しても詳細が表示されなかったりします。また、プロトコル解析機能などを使った際に、記録できるフレーム数が少なくなるため、解析対象が限定されてしまいます。これは、通信トラブルの再現や突発的な現象の捕捉といった場面で特に不利になります。
また、波形を拡大表示(ズーム)した際に、点が粗くなり輪郭が不明瞭になることもあります。これは、サンプル点が不足しているためで、メモリ長が長ければより高密度で波形を観察することが可能になります。
メモリ分割(セグメント)機能との併用
最近のオシロスコープには「メモリ分割(セグメント)機能」を搭載している機種もあります。この機能は、1回の測定を複数の短い波形に分割して効率的にメモリを使う仕組みです。突発的なイベントや間欠的な現象を効率よく捕捉したい場合に効果的で、限られたメモリでも長時間の監視が可能となります。
OWON機種におけるメモリ長の例
OWONのADS800Aシリーズでは、最大50Mポイントのメモリ長を搭載しており、12ビット分解能・高精細表示との組み合わせにより、信号の微細な変化も見逃しません。ADS3000シリーズやADS900Aシリーズも、長時間測定・高精度観測のために十分なメモリを搭載しています。
まとめ
オシロスコープのメモリ長は、記録時間や表示精度を大きく左右する性能です。サンプリングレートだけでなく、どれだけの時間・どれだけ細かく観測したいかを考慮して、適切なメモリ長を持つモデルを選定することが、精度の高い波形解析への第一歩となります。必要に応じて、メモリ分割機能なども併せて活用することで、より柔軟な測定が可能となります。
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