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12ビットオシロスコープならではの仕組み
- 2025/6/30 -

12ビットオシロスコープならではの仕組み

デジタル・オシロスコープは、電圧の時間変化を可視化するための基本的かつ重要な電子計測機器です。近年では、従来の8ビット分解能に加え、より高精度な12ビット分解能を備えたオシロスコープが注目を集めています。12ビット機は、微小信号の観測や高精度な解析を求める現場において、大きなアドバンテージをもたらします。

■ 分解能の違いとは
ADC(アナログ・デジタル変換器)のビット数は、アナログ信号をいくつのステップに分けてデジタル化するかを示しています。
・8ビット:2の8乗=256段階
・12ビット:2の12乗=4096段階
つまり、12ビットでは256段階の16倍もの細かさで信号を捉えることができ、これが測定の精度に直結します。

■ なぜ12ビットが必要なのか
現代の電子機器では、低電圧動作・高速応答・複雑な制御信号が多く用いられており、それらを正確に捉えるためには従来の8ビット機では精度が不足するケースがあります。12ビットのオシロスコープは、こうした微細な波形変動も滑らかに表示でき、波形の読み取りミスやトラブルの早期発見に寄与します。

■ 波形表示の滑らかさ
8ビット機では、信号の滑らかな変化を再現する際に「階段状」に表示されることがあります。これが波形の歪みとして見えてしまい、正確な解析を阻害する要因となります。12ビット機では段差が非常に小さく、なめらかな曲線として表示されるため、信号の本質的な動きを正しく捉えることができます。

■ FFTやスペクトラム解析にも有効
高分解能は、時間軸表示だけでなく、FFT解析(周波数領域表示)でも効果を発揮します。より広いダイナミックレンジが確保でき、信号に埋もれていたノイズ成分や微弱な周波数成分を発見しやすくなります。特にノイズ源の解析や高調波の評価などでは、12ビットの分解能が解析精度に大きな差を生みます。

■ OWON製12ビットオシロスコープの代表例
OWONでは、以下のような12ビット分解能を搭載した実用モデルを展開しています。
ADS800Aシリーズ
ADS900シリーズ
ADS3000 シリーズ
いずれも高性能ながら価格は比較的抑えられており、教育機関や中小企業の開発現場でも導入しやすい設計となっています。

■ 具体的な用途例
・電源回路のリップル電圧や過渡応答の高精度評価
・センサ信号(温度・加速度など)の微小な変化の観測
・PWM信号のデューティ比や変調深度の確認
・アナログオーディオ信号のひずみ解析やノイズ評価
・マイコンI/Oやバス信号の微細な過渡現象の確認

■ 注意点と限界
12ビットであっても万能というわけではありません。以下のような点に注意しないと、本来の分解能を活かしきれない可能性があります。
・ノイズ対策(接地やプロービング)の不備
・レンジ設定の不適切さ
・観測対象に対してオーバースペックまたはスペック不足
また、12ビットに対応した表示回路やデータ処理系の性能も重要です。

■ まとめ
12ビットオシロスコープは、8ビットでは捉えきれなかった微細な波形やノイズ成分を明確に視認できるという大きな利点を持っています。特にOWONのADS800A/ADS900シリーズは、高分解能を身近な価格帯で提供し、開発・研究・教育の各シーンにおいて新しいスタンダードとなりつつあります。今後は、自動車・医療・IoTなどの分野でも、12ビット以上の分解能を求める声がますます高まることが予想されます。

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