オシロスコープ 周波数帯域 選び方
オシロスコープの「周波数帯域(帯域幅)」は、観測できる信号の最大周波数を示すスペックであり、測定の正確さに大きく関わる重要な選定ポイントです。適切な帯域幅を選ばなければ、波形が歪んだり、重要な信号成分を見落としたりする原因となります。そのため、オシロスコープを選ぶ際は、測定対象となる信号の特性を正しく理解し、それに見合った帯域幅を持つ機種を選定する必要があります。
帯域幅とは何か
帯域幅とは、オシロスコープが正確に測定できる周波数範囲の上限値のことです。一般的には、入力信号の振幅が本来の約70%(−3dB)に減衰する周波数点を指します。この帯域幅を超える周波数成分は正しく表示されず、波形が鈍ったり滑らかになったりして、本来の信号形状が失われてしまいます。
たとえば、正方形波やパルス波のように立ち上がりの速い波形には多数の高調波成分が含まれており、それらを再現するためには高い帯域幅が必要です。
測定対象に応じた帯域幅の選定基準
帯域幅は「測定したい信号の最高周波数成分」の3~5倍程度を目安に選ぶのが一般的です。これは、信号の立ち上がり成分や高調波を含めた全体像を正確に再現するためです。
以下は、用途別の帯域幅選定の目安です。
■ センサ信号や電源波形(数kHz~数MHz):50~70MHz
■ マイコンI/O、PWM波形(数十MHz):100~200MHz
■ CAN/LIN通信やRS-232など(~数Mbps):100~250MHz
■ USB2.0やLVDSなど高速デジタル信号(数百MHz):500MHz~1GHz
■ RF信号や高速クロック波形(GHz帯):1GHz以上
たとえば、50MHzのクロック信号を観測する場合でも、波形の立ち上がりやノイズを正確に捉えるには200MHz以上の帯域が望まれます。
過不足のある帯域幅の影響
帯域幅が狭すぎると、波形のエッジがなまって表示されたり、高調波成分が削られて異なる波形形状として表示されたりします。逆に、必要以上に広い帯域を選んでしまうと、ノイズの影響を受けやすくなり、不要な成分まで観測されることで解析が難しくなることもあります。
また、広帯域モデルは一般的に高価格であるため、コストパフォーマンスの観点からも「必要な帯域幅+α」に留めることが推奨されます。
立ち上がり時間からの帯域幅の推定
波形の立ち上がり時間(rise time)から必要な帯域幅を見積もることもあります。特に、パルス波形やデジタル信号の品質評価を行う際には、立ち上がりが速いほど高い帯域幅が必要になります。設計時に「この波形の立ち上がり時間は数ナノ秒」とわかっていれば、それに応じた帯域幅を備えたオシロスコープを選定することで、信頼性のある波形解析が可能になります。
プローブとの組み合わせに注意
オシロスコープ本体の帯域幅が十分でも、使用するプローブの帯域が狭ければ、全体としての性能が制限されてしまいます。たとえば、500MHzのオシロスコープを使っても、プローブが100MHzまでしか対応していなければ、その分しか観測できません。帯域幅を最大限に活用するには、高周波対応のプローブや50Ω終端設定などを適切に組み合わせることが重要です。
最近のモデルと帯域の進化
近年のデジタル・オシロスコープは、従来よりも手頃な価格帯で広帯域に対応できるようになってきました。たとえば、OWONのADS3000シリーズは最大500MHzまでの帯域幅を持ち、12ビット高分解能と併せて精度の高い波形観測が可能です。また、ADS900Aシリーズでは、帯域250MHzの4chモデルに加え、デジタルチャネルや任意波形発生器も内蔵可能となっており、開発や検証作業において非常に汎用性の高い構成が選べます。
まとめ
オシロスコープの周波数帯域は、波形の正確な観測と解析に直結する重要なスペックです。用途や信号特性に応じて適切な帯域幅を見極めることで、無駄のない機種選定が可能になります。広ければよいというわけではなく、「目的に合った最適な帯域幅」を選ぶことが、効率的で確実な測定への第一歩です。
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