測定シーン別オシロスコープ活用術 第6回「オーディオ波形の確認とひずみの可視化」
オーディオ機器の設計や調整では、出力される音声信号が意図したとおりの波形であるかを確認することが重要です。オシロスコープを使えば、波形の視覚化やひずみの有無を簡単にチェックできます。
オーディオ信号の基本特性
■ 周波数帯域は一般的に20Hz〜20kHz
■ 波形は正弦波、矩形波、音楽信号など多様
■ アンプなどの出力信号は振幅が大きく、増幅度の確認にも活用できる
■ スピーカー駆動用信号は高電圧の場合もあるため、プローブの耐圧に注意
測定時の基本設定
■ 水平軸を1〜10ms/div程度に設定して波形の周期を見やすくする
■ 垂直軸は出力レベルに合わせて適宜調整(1V/divなど)
■ トリガーは立ち上がり/立ち下がりの安定したエッジに合わせると波形が固定表示されやすい
■ 周波数カウンタ機能で音源の周波数確認が可能
ひずみ(ディストーション)の可視化方法
■ 理想的な正弦波と比較して波形が崩れているかを確認
■ 特に波形のピーク部分が平坦になっている場合、クリッピングの可能性がある
■ FFT機能を使って高調波成分の出現をチェックすると、ひずみの量をより正確に把握できる
■ アンプやDACの出力で、波形の左右対称性が崩れていないかもポイント
オーディオ波形測定時の注意点
■ 入力するオーディオ信号がミュートや無音状態ではないか確認する
■ 測定対象によってはグランドループやノイズの影響が波形に現れるため、接続方法を工夫する
■ 高周波ノイズが重畳している場合、ローパスフィルタで除去してから観測すると見やすい
■ 出力がバランス信号の場合は、差動プローブを使用すると測定しやすい
まとめ
オーディオ波形の観測は、耳では気づきにくいひずみや異常を可視化する手段として有効です。アナログアンプやDACの調整だけでなく、デジタル音声処理の動作確認にも役立ちます。次回は「FFTを使ったノイズ源の分析」をご紹介します。
測定シーン別オシロスコープ活用術(全8回)
対象読者:オシロを使ったことがある中級者向け
■ 第1回:電源回路の基本測定(リップル/過渡応答)
■ 第2回:センサー出力の確認(温度/加速度)
■ 第3回:PWM信号のデューティ比確認
■ 第4回:アナログ vs デジタル信号の測定方法の違い
■ 第5回:マイコンI/Oの応答チェック
■ 第6回:オーディオ波形の確認とひずみの可視化
■ 第7回:FFTを使ったノイズ源の分析
■ 第8回:複数チャネルの同時測定と相関分析
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