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デジタル・オシロスコープの選び方
- 2025/6/17 -

デジタル・オシロスコープの選び方

デジタル・オシロスコープは、電子回路の電圧信号を時間軸で視覚化するための基本的な測定器です。回路設計、修理、開発、研究、教育など幅広い現場で使われており、使用目的や信号の特性に応じて最適なモデルを選ぶことが求められます。ここでは、初心者から中級者までを対象に、オシロスコープ選定時に確認すべき主要ポイントを解説します。

 

1. 使用目的を明確にする

まず最初に、どのような信号を、何のために測定するのかを明確にします。たとえば、センサ信号やPWM制御波形、通信信号、高速クロック、ノイズ成分など、対象が異なれば必要な性能も大きく変わります。また、「波形を見るだけでよいのか」「波形の詳細解析が必要か」「複数信号を同時に見たいのか」などの用途も選定基準になります。

 

2. 周波数帯域を確認する

周波数帯域(帯域幅)は、オシロスコープが測定できる信号の最高周波数を示す重要なスペックです。測定対象の信号に含まれる最高周波数成分の「3~5倍程度」の帯域幅を持つ機種が推奨されます。たとえば、100MHzのクロック信号には300~500MHzの帯域幅が必要です。

帯域が狭すぎると波形が正しく表示されず、歪んで見えることがあります。一方で広すぎてもノイズに敏感になったり、価格が高くなったりするため、適切な帯域選定が重要です。

 

3. サンプリングレートの目安を知る

サンプリングレートは、1秒間に信号を何回記録するかを示す指標で、波形の再現精度に影響します。一般的には、信号の最高周波数の「5~10倍」以上のサンプリングレートが必要です。たとえば、50MHzの信号を測定するには、最低でも500MSa/s以上の機種が推奨されます。

サンプリングレートが低いと、波形が粗く表示され、波形の立ち上がりやノイズ成分を正確に観測できません。

 

4. メモリ長(レコード長)を確認する

メモリ長とは、1回の測定で記録できる波形データの最大ポイント数です。サンプリングレートが高く、メモリ長が短いと、記録できる時間が非常に短くなります。過渡現象や通信信号など、長時間の波形を細かく記録するには、10Mポイント以上のメモリ長があると安心です。

波形の詳細なズーム解析やFFT解析を行う際にも、メモリ長は非常に重要な要素となります。

 

5. チャンネル数を選ぶ

オシロスコープのチャンネル数は、同時に観測できる信号の数を示します。基本的な2chモデルのほか、4ch、6ch、8chなどの構成もあります。複数の信号の関連性を確認したい場合や、差動信号を同時に観測したい場合には、4ch以上のモデルが推奨されます。

また、デジタル信号解析用にMSO(ミックスド・シグナル・オシロスコープ)機能を備えたモデルもあり、アナログ+デジタルの同時測定に対応できます。

 

6. 分解能と表示精度を考慮する

一般的なデジタル・オシロスコープの垂直分解能は8ビットですが、より精密な測定を行いたい場合には12ビットや14ビットの高分解能機種がおすすめです。特に微小信号の測定や、低ノイズ設計、電源の立ち上がり解析などでは、12ビット以上の分解能が威力を発揮します。

表示精度だけでなく、ノイズの少ないADC性能も合わせて評価することがポイントです。

 

7. トリガ・解析機能の充実度

トリガ機能は波形を安定表示させるために欠かせません。標準のエッジトリガだけでなく、パルス幅トリガ、ビデオトリガ、シリアルデータトリガなど、必要なトリガタイプが搭載されているかを確認しましょう。

また、プロトコル解析(I2C、SPI、CANなど)、FFT解析、演算機能、マスク試験など、使用する場面に応じた解析機能が備わっているかも重要なポイントです。

 

8. 操作性と画面サイズ

最近のオシロスコープは、7インチ~12インチのタッチスクリーンを備えたモデルも多く、操作性が大きく向上しています。波形のズーム、カーソル設定、メニュー操作などが直感的に行えるかどうかも、日常的な作業効率に直結します。

特に多機能モデルでは、操作画面の見やすさやレスポンスの速さも評価基準となります。

 

9. 価格と将来性のバランス

機能や性能が充実したモデルほど価格も上がります。すぐに必要なスペックだけでなく、将来の拡張性や活用範囲も見据えて、コストパフォーマンスの良いモデルを選ぶことが大切です。

USB、LAN、HDMI、Wi-Fiなどの接続端子、ソフトウェア連携、ファームウェア更新の可否なども、選定時にチェックしておくと安心です。

 

まとめ

デジタル・オシロスコープは、性能のバランスと使いやすさが測定精度と作業効率に直結します。使用目的に応じた帯域幅・サンプリングレート・メモリ長・チャンネル数を軸に、必要な解析機能や操作性を確認することで、最適な1台を選ぶことができます。オシロスコープ選びは、測定の“見える化”を支える第一歩です。

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