失敗しないオシロスコープ操作術 第5回「信号が途中で切れている?帯域幅とメモリの落とし穴」
波形の一部が途中で途切れて見える、詳細が見えない、思ったよりも粗い表示になる――そんなときは、オシロスコープの「帯域幅」と「メモリ長」に注目する必要があります。表示上のトラブルの多くは、これらの仕様や設定に起因しています。
帯域幅の制限が波形の詳細を消している
■ オシロスコープの帯域幅は、観測可能な信号の最高周波数を決定する
■ 例えば100MHz帯域の機種では、それ以上の高周波成分を正確に表示できない
■ 高速パルスやエッジの鋭い信号では、帯域幅が不足すると立ち上がりが鈍って表示される
■ 実測したい信号の最高周波数の3〜5倍の帯域幅を持つ機種が理想的
サンプリングレートとメモリ長の関係を理解する
■ サンプリングレート(例:1GSa/s)が高ければ、それだけ詳細な波形が記録できる
■ しかし記録できる長さ(時間)は、メモリ長によって制限される
■ 長時間記録が必要なとき、サンプリングレートを落とさなければ波形の末尾が切れる可能性がある
■ 一方、メモリが長すぎると処理が遅くなり、画面更新レートが落ちることもある
波形が「切れて」見えるときの主な原因
■ サンプリングポイントが少なく、波形が間引かれて表示されている(デジタルエイリアス)
■ 表示の時間軸が長すぎて、短いパルスが見えない
■ メモリ長が短いため、1画面に表示しきれない情報がトリガー前後で切れている
■ 波形更新レートが遅く、偶然捉えた一部しか表示されない
対策としてできること
■ 使用している帯域幅・メモリ長・サンプルレートのスペックを把握しておく
■ 高速信号の観測では、広帯域モデルや高サンプリングモデルを選ぶ
■ 必要に応じて「ズーム」機能や「セグメントメモリ」機能を活用し、必要部分を高解像度で記録
■ 短い波形なら、サンプリングレートを最大にして詳細表示を優先する
■ 長時間記録が必要なら、サンプリングレートとメモリ長のバランスを調整する
まとめ
「波形が途中で切れている」ように見えるとき、問題の多くは帯域幅とメモリ仕様にあります。どんな信号を観測したいかによって、適切な設定と機材選定が必要です。次回は「測定値が信用できないときに見直すポイント」について解説します。
■対象読者:使い始めたばかりの技術者/トラブルが多い初心者
■ 第1回:波形が表示されないときのチェックリスト
■ 第2回:プローブの誤接続で起こる問題と対処法
■ 第3回:トリガーが安定しない原因と解決策
■ 第4回:ノイズだらけの波形を改善する方法
■ 第5回:信号が途中で切れている?帯域幅とメモリの落とし穴
■ 第6回:測定値が信用できないときに見直すポイント
■ 第7回:保存・エクスポート・PC転送トラブルの対処法
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